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建築設計事務所の経理は「建設業会計」ではない
建築の仕事に関わる事務所だと、「建設業の会計処理が必要なのでは?」と考える所長先生がいます。しかし建築設計事務所は、施工(実際の工事)を行わないため、建設業特有の「完成工事高」「完成工事原価」「未成工事支出金」といった勘定科目を使う必要はありません。
一般的な会計ルールに沿って処理できる一方で、設計事務所ならではの論点があります。もっとも多い相談が「設計監理料をいつ売上に計上すればいいか」と「外注設計費を払うとき源泉徴収が必要か」の2点です。
なお、建設・工事業の会計処理(工事進行基準や完成工事高の取り扱い)については、建設・工事業が経理代行を活用すべき3つの理由で詳しく解説しています。
設計監理料の計上タイミング:3つのパターン
設計業務の契約は通常、「基本設計」「実施設計」「工事監理」の3フェーズに分かれており、各フェーズが完了した時点で段階的に請求する形が一般的です。会計上の収益計上は、この請求タイミングに合わせるのが実務の基本になります。
パターン①:フェーズ完了ごとに計上(最も一般的)
基本設計完了時・実施設計完了時・工事竣工時の3回に分けて請求し、それぞれの完了時点で売上を計上する方法です。設計契約書に各フェーズの報酬金額と支払時期が明記されていれば、この処理が一番シンプルです。
パターン②:着手金・残金の2回払い
「着手金30%・竣工時70%」のように2回払いで設計料を受け取る場合、入金時期が業務の完了時期と必ずしも一致しません。着手金を受け取ったときは「前受金」として処理し、業務が完了した段階で売上に振り替えるのが正しい処理です。「お金が入ったからとりあえず売上に入れた」という処理は誤りになります。
パターン③:一括払いで工事終了後に計上
小規模な案件では工事完了後に設計料を一括受け取るケースもあります。この場合は受取時が売上計上のタイミングになります。ただし、年度をまたいで長期にわたる設計業務の場合は、業務の進捗割合に応じた計上を検討する必要があります。
外注設計費の源泉徴収:個人か法人かで判定が変わる
設計事務所では、構造設計・設備設計・インテリアデザインなどを外部の専門家に委託することがよくあります。この外注費を支払う際に「源泉徴収が必要かどうか」で迷うケースが非常に多くあります。
判定のポイントは「支払い先が個人か法人か」です。
建築物の設計・工事監理に対する報酬は、国税庁の定めにより源泉徴収の対象とされています(所得税法第204条第1項)。ただし、この源泉徴収義務が生じるのは相手方が個人・個人事業主の場合に限られます。
| 支払い先 | 源泉徴収 |
|---|---|
| 個人の建築士・フリーランス設計士 | 必要(100万円以下は10.21%、超過分は20.42%) |
| 構造設計事務所(法人) | 不要 |
| 設備設計会社(法人) | 不要 |
| 個人のインテリアデザイナー | 必要 |
税率は支払金額が100万円以下の部分は10.21%、100万円を超える部分は(超過額×20.42%+102,100円)になります(国税庁 No.2798)。建築設計料は1件あたり100万円を超えることが多いため、この区分を正確に把握しておく必要があります。源泉所得税の納付期限は原則として翌月10日ですが、常時雇用する従業員が10名以下の事務所は「納期の特例」を申請することで、1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日にまとめて納付できます。
小さな設計事務所ほど、フリーランスの建築士や構造設計士と継続的に協働しているケースが多く、毎月の源泉徴収計算と年に一度の支払調書作成(翌年1月31日期限)が漏れなく行われているかどうかが重要です。源泉徴収の処理が抜けたまま数年間放置されると、不納付加算税や延滞税が発生し、まとめて追徴されるケースがあります。金額が大きくなりやすい設計料だからこそ、早い段階で正しい処理を押さえておくことが大切です。
技術者の人件費管理:給与計算と経費処理の注意点
建築設計事務所の固定費のうち、最も大きな割合を占めるのが設計スタッフの人件費です。中小規模の設計事務所では、売上に対する人件費比率が50〜65%程度になることも珍しくありません(設計業の業種別財務データ参照)。
設計スタッフはプロジェクトの進行状況によって深夜・休日の作業が発生しやすく、残業代の計算が不規則になりがちです。一定の経験を持つ設計士を「裁量労働制」の対象とする場合、労働時間の管理と給与計算の設定が通常の事業所と異なるため、正確な対応が求められます。
また、設計スタッフが日常的に使うCADソフト(AutoCAD・Vectorworksなど)やBIMソフト(Revit・Archicad)のサブスクリプション費用の勘定科目についても確認が必要です。「ソフトウェア」として資産計上すべきか、「諸経費」「通信費」として費用処理できるかは、契約形態(一括購入かサブスクか)によって異なります。クラウド型の年額払いサブスクリプションの場合は費用処理が一般的です。GrowUpでは給与計算や経費精算の代行も承っており、設計スタッフの残業代計算やソフト費用の仕訳整理もまとめてお任せいただけます。
経理代行でできること:設計事務所に多い業務
税理士法人GrowUpでは、建築設計事務所向けの経理代行として次のような業務を承っています。
毎月の仕訳入力(設計監理料の段階計上・外注費の処理)のほか、源泉徴収義務の管理(毎月の納付・年間の支払調書作成)、給与計算(設計スタッフの残業代を含む)、試算表の作成と資金繰りの確認まで、まとめてお任せいただくことが可能です。freee認定アドバイザーが対応しており、クラウド会計との連携もスムーズに行えます。
滋賀県内(草津市・大津市・守山市・彦根市など滋賀県全域)に事務所を構える建築設計事務所の所長先生が、設計業務と施主対応に集中できるよう、経理まわりの業務をGrowUpがサポートします。
また、設計事務所が成長して規模が大きくなった際に法人化を検討する場合、GrowUpでは会社設立サポートも行っています。詳しくは会社設立滋賀.comをご覧ください。
まとめ
建築設計事務所の経理でポイントになるのは次の3点です。
- 設計監理料はフェーズ完了ごとに計上が基本。着手金は「前受金」として受け取り時に売上に入れない
- フリーランスの建築士・デザイナーへの支払いは源泉徴収が必要。法人への支払いは不要
- 設計スタッフの残業計算・CADソフトの費用処理など、人件費まわりの整理も欠かせない
経理を自社で対応しようとすると、これらの判断にかなりの時間と知識が必要です。まずは一度、月々の経理作業をまとめてお任せいただける経理代行についてご相談ください。