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労働保険の年度更新が始まる6月|2026年度のスケジュールと押さえどころ
毎年6月1日から7月10日までは、労働保険の年度更新の手続き期間です。この手続きは、前年度(2025年4月〜2026年3月)に支払った賃金をもとに確定保険料を計算し、当年度(2026年4月〜2027年3月)の概算保険料とあわせて申告・納付するものです。労災保険と雇用保険の両方を1枚の申告書で処理する一元適用事業所と、別々に処理する二元適用事業所(建設業や農林水産業など)で様式や記入欄が変わるため、自社がどちらに該当するかを最初に確認します。
申告期間は1か月強と短く、3月決算法人の申告・自動車税の納付・住民税の特別徴収切替えと重なります。経理担当者にとって6月は1年で最も忙しい月のひとつです。準備に1週間、申告書作成に2〜3日、電子申請と納付に半日というのが目安で、5月のうちに賃金台帳の整備と労働者数の集計を済ませておくと余裕が出ます。
労働保険料の納付方法は3つあります。1つは口座振替で、初回登録すれば次年度以降は申請不要です。2つ目はPay-easy(ペイジー)による電子納付、3つ目は金融機関窓口での納付書納付です。延納(分割納付)を選ぶ場合は概算保険料が40万円以上(労災・雇用のいずれか一方なら20万円以上)で第1期7月10日・第2期10月31日・第3期翌年1月31日の3回払いになります。
申告書の書き方|賃金集計と概算・確定保険料の計算手順
申告書の中心は「賃金集計表」と「保険料の計算」です。この2つさえ正確に作れれば、年度更新は半分終わったと考えていいくらい重要な工程です。
賃金集計の対象に含まれるもの・含まれないもの
労働保険料の計算基礎となる「賃金」は、所得税法上の給与所得とほぼ同じですが、いくつか注意点があります。含めるのは、基本給・残業手当・通勤手当(所得税で非課税となる金額も含めて全額)・賞与・特別手当・住宅手当・家族手当などです。一方で、退職金・出張旅費・結婚祝金・出張手当・解雇予告手当は含めません。
特に間違いやすいのが通勤手当です。所得税では非課税限度(公共交通機関なら月15万円まで)が設定されていますが、社会保険料・労働保険料の計算では非課税限度を超えても超えなくても全額が賃金扱いになります。給与計算ソフトで「課税通勤手当」「非課税通勤手当」を分けて管理している場合は、両方を合計して労働保険の賃金集計に反映させます。
兼務役員(取締役兼総務部長など)の賃金は、従業員としての給与部分のみが対象です。役員報酬部分(取締役としての対価)は対象外で、給与計算ソフトに「役員給与」と「従業員給与」を分けて記録しておくと処理が楽になります。
概算保険料と確定保険料の計算式
確定保険料は「2025年度の賃金総額 × 労災保険料率+雇用保険料率」で計算します。概算保険料は「2026年度の賃金総額見込み × 各料率」で、見込み額が前年度比50%以内の変動なら前年度の確定保険料額をそのまま使えます。
2026年度の保険料率は次のとおりです。労災保険料率は業種ごとに千分の2.5から千分の88までの幅があり、たとえば事務職中心の業種は千分の3、製造業(食料品製造)は千分の5.5、建設業(既設建築物設備工事業)は千分の12、林業は千分の52と業種ごとに大きく違います。雇用保険料率は2026年3月12日告示で前年度から失業等給付分が0.5/1000引き下げられ、一般事業が13.5/1000(労働者5/1000・事業主8.5/1000)、農林水産・清酒製造業が15.5/1000(労働者6/1000・事業主9.5/1000)、建設業が16.5/1000(労働者6/1000・事業主10.5/1000)です(参考:厚生労働省・令和8年度雇用保険料率告示PDF)。労災保険料率は3年に1度の改定で2025年度の見直し後の料率が2026年度も継続されます。料率は申告前に厚労省の労働保険関係ページで最新値を確認します(厚生労働省・労働保険の年度更新)。
精算については「確定保険料が前年度の概算保険料より多い場合は不足額を当年度の概算保険料に上乗せして納付、少ない場合は当年度の概算保険料から差し引く」のがルールです。差額のサインを間違えると追加納付や還付の処理がややこしくなります。
e-Gov電子申請の手順|2026年度から義務化対象の範囲が拡大
電子申請の対象は 段階的に拡大しています。資本金1億円超の法人(特定法人)は2020年4月から電子申請が義務化済みで、2026年度(令和8年度)も継続です。中小企業(資本金1億円以下)は任意ですが、紙の申告書送付を停止して電子申請に統一する事業場も増えています。
e-Gov(電子政府の総合窓口)から申請する場合の手順は次のとおりです。
- GビズIDプライムを取得(取得まで通常1〜2週間、印鑑証明書1通必要)
- e-Govマイページにログイン
- 手続検索で「労働保険年度更新申告」を選択
- 賃金集計表を入力(パート・アルバイト・常用区分ごと)
- 確定保険料・概算保険料を入力
- 添付書類(雇用保険被保険者数の内訳など)をアップロード
- 電子署名(GビズIDプライムなら電子証明書不要)
- 送信して受付番号を控える
- 納付書を印刷または口座振替の手続き
GビズIDプライムを使えば電子証明書を別途取得する必要がなく、コストも年間ゼロ円です(マイナンバーカードを使った発行も無料)。法人代表者または個人事業主本人が代表してアカウントを作り、従業員にはGビズIDメンバーを発行して権限を分けます。
申告書の入力でミスがあった場合、送信前なら自由に修正できますが、送信後は「補正申請」または「変更届」での修正になります。電子申請なら受付完了通知がメールで届くので、控えとして必ず保存しておきます。
紙申告書での提出を選ぶ場合は、申告書が5月下旬に労働基準監督署から事業主宛に郵送されます。アクセスコード・労働保険番号が記載された通知書も同封されるため、紛失しないよう保管します。電子申請が義務化されている特定法人は2026年度から紙の申告書が送付されなくなり、「電子申請情報通知書」のみが届く運用になっています(参考:厚生労働省・労働保険関係手続の電子申請について)。
よくある記入ミス6選と修正方法
年度更新で実際に発生しがちなミスをまとめました。修正は申告期限後でも可能ですが、延滞金や追徴金のリスクがあるため、申告前にチェックリストとして使ってください。
1つ目はパート・アルバイトの賃金集計漏れです。雇用保険被保険者数の集計から外れがちで、特に短時間労働者が多い小売・飲食・サービス業で頻発します。週20時間以上の労働者は雇用保険加入対象なので、賃金台帳で雇用保険加入者を絞り込んで集計します。
2つ目は兼務役員の従業員給与部分の計上漏れです。役員報酬と従業員給与を一括で「役員報酬」勘定で処理しているケースが多く、年度更新で集計する際に従業員給与部分が抜けます。役員兼総務部長のような兼務役員は、給与計算ソフトで内訳を明示しておくと年度更新がスムーズです。
3つ目は通勤手当の集計除外ミスで、所得税の非課税限度(公共交通機関15万円・自家用車距離別表)で課税・非課税を判定する処理を、労働保険にも適用してしまう誤りです。労働保険では通勤手当は全額対象です。
4つ目は労災・雇用の料率変更の見落としです。雇用保険料率は毎年4月1日に改定されるケースが多く、2025年度と2026年度で料率が変わる業種は前年度値で計算すると金額がズレます。厚生労働省の告示で確認します。
5つ目は概算と確定の差額調整ミスです。確定保険料が前年度の概算保険料を上回る場合は不足額を加算、下回る場合は控除しますが、差額のプラス・マイナスを逆にしてしまうケースがあります。電卓ではなくExcelの算式で計算するとミスが減ります。
6つ目は申告書の「雇用保険被保険者数」の記入漏れ・誤記です。提出した労働保険番号と雇用保険適用事業所番号が一致しているかを確認します。複数事業場を持つ会社は本社一括申請をしているかどうかで様式が変わります。
申告期限を過ぎてしまった場合は、速やかに労働基準監督署または労働局に連絡して指示を受けます。延滞金は法定上限が年14.6%(納期限後2か月以内は年7.3%)で、実際の適用率は租税特別措置法の特例基準割合によって毎年変動します。納付遅延の日数分かかるため、期限内納付を徹底してください。
経理代行で年度更新の負担を減らす方法
労働保険の年度更新は1年に1回の手続きですが、賃金集計・保険料計算・電子申請の手順を毎年覚え直すのは経理担当者にとって負担が大きい業務です。給与計算ソフトを導入していても、料率改定や様式変更があるため自力対応はミスのリスクが残ります。
経理代行サービスを使うと、年度更新を含む賃金集計・申告書作成・電子申請・納付管理まで一括して任せられます。社会保険労務士と連携している経理代行事務所なら、労働保険だけでなく算定基礎届(7月)・月変届・賞与支払届などの社会保険手続きも同時に依頼可能です。7月の算定基礎届などの社会保険手続きも、年度更新とあわせて代行しています。経理担当者は本業の月次決算・売掛金管理・資金繰り業務に集中できます。
弊社は滋賀県内の中小企業を中心に、経理代行と社会保険手続きをワンストップで提供しています。労働保険の年度更新は社労士法人と連携しながら、賃金台帳の整備から電子申請までを毎年代行しています。労務手続きが個別に分散している会社からの相談が多く、年度更新を機に給与計算と経理を一本化したいというニーズも増えています。会社設立直後で「年度更新が初めて」という会社からの相談も増えており、初年度の落とし穴を踏まないために事前相談だけでも受けています(税理士法人GrowUpの会社設立サポート も参照)。
まとめ
労働保険の年度更新は6月1日から7月10日までの1か月強で完結する手続きですが、賃金集計・保険料計算・電子申請の3工程を正確にこなす必要があります。2026年度は雇用保険料率が一般事業13.5/1000・建設16.5/1000で、前年度から失業等給付分が0.5/1000引き下げられたため、前年度の概算保険料額をそのまま流用すると納付額にズレが出ます。GビズIDプライムを使ったe-Gov電子申請が標準化しつつあり、特定法人は紙申告書が送付されなくなる運用へ移行しています。よくある記入ミスは通勤手当・兼務役員・パート集計の3点が頻発するので、5月のうちに賃金台帳の整備を済ませておくと当日の作業が楽になります。社内で対応しきれない場合は、社労士・経理代行事務所への外部委託も選択肢に入れて検討してください。