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2026年4月から食事補助の非課税枠が倍増した
2026年3月31日付の所得税基本通達改正で、食事の現物支給に係る非課税限度額が月額3,500円から月額7,500円に引き上げられました。約42年ぶりの大幅見直しで、2026年4月1日以後に支給する食事から適用されます(国税庁・食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて)。
滋賀県内でも、湖南エリアの製造業や大津・草津の医療法人、彦根の小売業から「うちでも社員食堂を作るべきか」「弁当補助の制度を新設したい」という相談が増えています。物価高の局面で給与を上げるとそのぶん社会保険料も増えますが、食事補助は要件を満たせば従業員側で所得税非課税、会社側でも福利厚生費として全額損金算入できます。社会保険料も増えないため、「第3の賃上げ」として注目される改正です(日本経済新聞・社食補助の非課税枠、月3500円→7500円)。
当事務所でも、改正後の早いタイミングからお客様向けに改正内容のご案内を進めています。改正自体がまだ施行直後ということもあり、直接「制度を導入したい」というご相談を受ける場面は今のところそれほど多くはありませんが、夏季賞与の話題と合わせて関心が高まっているテーマです。
非課税にするための2つの要件
食事補助が所得税法上の非課税扱いになるには、次の2つを両方とも満たす必要があります(国税庁・No.2594-1 食事を支給したときの非課税限度額の判定)。
要件1:従業員が食事代金の半分以上を負担している
食事の評価額(仕入価格+調理コスト等)のうち、従業員が50%以上を負担していることが必要です。会社が全額負担すると、たとえ月額7,500円以下に収まっていても全額が給与課税の対象になります。
要件2:会社負担額が月7,500円(消費税抜き)以下
会社負担額の判定は消費税および地方消費税を除いた金額で行います。計算結果に10円未満の端数が生じたときは切り捨てます。月7,501円以上を会社が負担した場合は、超過分ではなく会社負担分の全額が給与として課税される点に注意が必要です。
全社員に公平に提供されていること
特定の部署や管理職だけが利用できる制度は、福利厚生費ではなく給与として課税対象になります。「製造ラインのみ」「役員と幹部のみ」のような限定運用はNGです(edenred・食事補助の非課税上限が7500円へ)。
社員食堂・食事券・宅配弁当・置き型社食の処理の違い
形態によって経理処理と非課税判定の論点が変わります。
直営社員食堂
社員食堂を自社で運営する場合は、食材費・人件費・水道光熱費・厨房設備の減価償却費を「福利厚生費」勘定で集計します。従業員からの徴収額は「雑収入」(課税売上)で計上します。会社負担額の計算は、年間運営コストから従業員徴収額を差し引いた金額を1人月単位に按分するのが現実的です。
食事券・チケット制
外部委託で食事券(チケットレストランなど)を従業員に配布する場合は、券面額の50%以上を従業員から徴収していれば「福利厚生費」(課税仕入)で処理できます。配布した時点では費用計上せず、従業員が使用した月の費用とすることがポイントです。
宅配弁当・お弁当補助
宅配弁当(業者から会社一括発注)は、会社負担分を「福利厚生費」(課税仕入)、従業員徴収分を「雑収入」または「立替金」相殺で処理します。出退勤管理と連動した個別精算が必要で、給与計算ソフトの「食事代控除」項目で給与から天引きする運用が一般的です。
置き型社食(OFFICE DE YASAI等)
冷蔵庫設置型の置き型社食は、会社が業者に月額利用料を支払い、従業員が1品ごとに料金を支払って利用する仕組みです。会社負担分は「福利厚生費」で計上し、従業員負担分は社内集金後に業者へ支払う流れになります。会社負担額が月7,500円以下に収まっているかを業者の請求明細で月次確認します。
現金支給はNG、残業夜食には特例あり
「ランチ代月3,000円支給」のような現金支給はすべて給与課税です。非課税となるのは現物支給(食事そのもの)に限られるため、商品券や金券、銀行振込での補助はすべて課税対象になります。
一方、次の2つは月7,500円の枠とは別枠で全額非課税になる特例です。
- 残業夜食:時間外勤務をする従業員に出す夜食は、社員食堂・出前・宅配弁当のいずれでも全額会社負担で非課税
- 深夜勤務者への食事:深夜勤務(22時以降)の従業員への現物食事支給は全額非課税。現物支給に代えて金銭で支給する場合も、2026年4月1日以後は1回650円以下(改正前300円以下)であれば非課税です(令和8年3月31日付課法12-3ほか1課共同通達)。深夜勤務食の現金支給特例は廃止されたわけではなく、42年ぶりに金額が引き上げられた点に注意が必要です
建設現場や運送会社、医療機関、24時間営業の店舗で多用される論点です。残業時間と食事の支給記録を勤怠管理システムに残しておくことが、税務調査対策として有効です。
滋賀の中小企業が今すぐ確認すべきポイント
非課税枠の改正を活かすには、4月以降の運用変更を就業規則と経理処理に正しく反映する必要があります。実務で見落としやすいのは次の4点です。
① 福利厚生規程・就業規則の改定
月額3,500円ベースで作っていた福利厚生規程は、7,500円ベースに改定します。労働基準法上、福利厚生規程の変更は労使協議が望ましく、社員に有利な変更(負担減)であれば届出だけで足りるケースが多い一方、従業員負担額を変える場合は周知期間が必要です。
② 給与計算ソフトの設定変更
freee人事労務、マネーフォワードクラウド給与、弥生給与、PCAなどの給与計算ソフトでは「食事代控除」項目の設定見直しが必要です。会社負担額の上限を月7,500円に変更し、超過分が自動的に給与課税対象になる設定にしておくと、税務調査時の整合性を取りやすくなります。
③ 適用開始月の按分処理
2026年4月1日以後の支給から適用されるため、月をまたぐ給与計算期間(例:3月21日〜4月20日締め)の処理に注意が必要です。原則として「支給日」基準で判定するため、4月の給与で支給される食事補助は新しい非課税枠で判定できます。
④ 消費税の経過措置とインボイス
食事補助の業者がインボイス発行事業者かどうかで仕入税額控除の扱いが変わります。令和8年度税制改正大綱では、2026年10月1日以後の未登録業者からの仕入の控除率を80%から70%に引き下げる経過措置の延長が示されており、現時点では70%への引き下げが予定されています。改正成立後の業者選定の見直しタイミングとして、相談を受けるケースが増えています。インボイス経過措置の詳細は当サイトのインボイス経過措置に関する関連記事もあわせて参考にしてください。
まとめ
2026年4月の改正で食事補助の所得税非課税枠が月7,500円に倍増したことで、賃上げの代替策として食事補助制度を新設・拡充する中小企業が増えています。非課税にする要件は「従業員50%以上負担」と「会社負担月7,500円以下」の2つで、どちらも欠かせません。現金支給は対象外、残業夜食・深夜勤務食は別枠で非課税、給与計算ソフトの設定変更も必要、と運用上の細かな論点が多い改正です。
社員食堂・食事券・宅配弁当・置き型社食のどれを選ぶかで経理処理と消費税の取り扱いが変わります。福利厚生規程・就業規則・給与計算ソフトの3点をセットで見直すことで、税務調査時の指摘リスクを下げられます。滋賀県内で食事補助制度の新設・見直しを検討している会社は、税理士法人GrowUpの経理代行サービスにご相談ください。