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清掃業・ビルメンテナンス業の経理は「人件費」の扱いがカギ
清掃業やビルメンテナンス業は、売上の大半が「人が現場で作業すること」で生まれる。全国ビルメンテナンス協会の実態調査によると、ビルメンテナンス業の人件費率はおよそ57.7%で、売上総利益率は19.3%にとどまる(出典:ビルメンテナンス情報年鑑2024)。つまり、売上が伸びても人件費の管理を誤れば利益はほとんど残らない。
滋賀県でも大津市・草津市の商業施設やマンション管理組合から清掃を受託する事業者、工場の定期清掃を請け負う業者など、清掃・ビルメンテナンス事業者は数多く存在する。しかし、従業員10名以下の小規模事業者が多く、社長やその家族が経理を兼任しているケースが少なくない。
実際に清掃業のお客様からは「パートさんが多くて、毎月の給与計算だけで丸1日以上かかっている」という相談をよくいただく。現場ごとにシフトが異なるうえ、深夜帯の割増計算も加わるため、人数が増えるほど作業量は膨れ上がる。
この記事では、清掃業・ビルメンテナンス業に特有の経理処理のポイントと、経理代行を活用して業務負担を減らす方法を解説する。
契約形態で異なる売上の計上方法
清掃業の売上は、契約の種類によって計上のタイミングが変わる。主に3つのパターンがある。
月額定額契約(ビル・マンションの定期清掃)
オフィスビルやマンションの共用部清掃を月額固定で受託する契約。毎月一定額の売上を「役務提供が完了した月」に計上する。たとえば4月分の清掃を4月中に実施して5月に請求書を発行する場合、売上の計上は4月になる。入金が5月末であっても、発生主義では4月に売上を立てる必要がある。
スポット清掃(ハウスクリーニング・引越し後清掃など)
1回ごとに発注・完了する清掃業務。作業が完了した日に売上を計上する。年末の大掃除シーズンや引越し繁忙期(3〜4月)に売上が偏りやすいため、月ごとの損益を正しく把握するには、材料費や外注費も同じ月に対応させて計上することが大切になる。
年間契約(工場・病院の定期清掃)
年間一括で契約金額が決まっているケースでは、役務の提供期間に応じて月割りで売上を計上する。たとえば年間契約120万円なら、毎月10万円ずつ売上計上するのが原則。契約時に全額を前受金として受け取っている場合は、前受金を毎月取り崩す処理が必要になる。
いずれのパターンでも、「作業完了報告書」や「日報」を残しておくと、売上計上の根拠資料として使える。税務調査の際にも、計上時期の妥当性を説明しやすい。
外注費と給与の区分は税務調査で最も指摘されやすいポイント
清掃業では、現場作業を他の清掃業者や個人の作業員に委託するケースが多い。このとき、その支払いが「外注費」になるのか「給与」になるのかは、税務上の大きな分かれ目になる。
外注費であれば消費税の仕入税額控除が使え、源泉徴収も不要(清掃業務は源泉徴収の対象となる報酬に該当しない)。しかし、税務調査で「実態は雇用だ」と判断されると、消費税の仕入税額控除が否認されるうえ、源泉所得税の徴収漏れとして不納付加算税・延滞税が課される。
外注と雇用を分ける5つの判定基準
税務調査で見られるポイントは主に以下の5つ。
- 指揮監督の有無 — 作業の手順や方法を依頼者側が細かく指示しているなら「雇用」寄り。作業員が自分の判断で進めているなら「外注」寄り
- 時間的拘束の有無 — 出退勤の時刻をタイムカードで管理しているなら「雇用」の要素が強い
- 代替性の有無 — 本人以外の人間が作業を代行できる契約になっているかどうか。代替不可なら「雇用」寄り
- 報酬の計算方法 — 時給・日給で計算しているなら「雇用」寄り。1件あたり・1回あたりの成果報酬型なら「外注」寄り
- 材料・道具の負担 — 清掃道具や洗剤を依頼者側が支給しているなら「雇用」の要素が強い
この判定は「契約書に外注と書いてあるから大丈夫」というものではなく、実態で判断される。清掃業は建設業の「一人親方」問題と同じ構造を抱えており、形式上は業務委託契約を結んでいても、実態が雇用とみなされるリスクがある(出典:税務調査専門 税理士法人松本)。
ネット上でも同様の事例が紹介されているが、外注費が認められなかったケースでは「作業時間を依頼者側がタイムカードで管理していた」「清掃道具をすべて依頼者側が支給していた」「本人以外が作業を代行できない契約になっていた」といった実態が問題になっている。形式上は業務委託契約でも、こうした雇用に近い実態があると税務署は「給与」と判断する。
外注先との契約書を整備し、作業報告書を外注先に作成させ、材料は外注先負担とするなど、契約内容と実態を一致させておくことが重要になる。この管理を自社で行うのが難しい場合は、経理代行に任せることで書類の整備と仕訳の一貫性を保てる。
消耗品と制服の経費処理で迷いやすい3つのケース
清掃業では洗剤やモップといった消耗品の購入が頻繁に発生する。経費の処理方法を整理しておかないと、決算時にまとめて計上する「ドカ計上」になりがちで、月次の損益が正確に把握できなくなる。
ケース1:洗剤・モップ・ゴム手袋などの消耗品
購入時に「消耗品費」として経費計上するのが基本。ただし、大量にまとめ買いして在庫を持つ場合は、使用した分だけを費用計上し、未使用分は「貯蔵品」として資産に計上するのが正確な処理。実務上は、月末の在庫金額が少額であれば購入時に全額費用計上しても問題ないことが多い。
ケース2:制服・作業着
従業員全員に支給する制服や作業着は「福利厚生費」として処理する。ただし、特定の個人だけに高額な作業着を支給するような場合は「給与」として課税される可能性がある。全員一律に支給し、勤務中のみ着用する前提であれば福利厚生費で問題ない。
ケース3:清掃機材(ポリッシャー・高圧洗浄機など)
1台あたりの取得価額が10万円未満であれば「消耗品費」として一括で経費にできる。10万円以上20万円未満なら「一括償却資産」として3年で均等償却する方法が使える。20万円以上なら固定資産として耐用年数に応じた渜価償却が必要になる。中小企業者等の場合は、少額渜価償却資産の特例を使えば40万円未満の資産を一括で経費にできる(年間合計300万円が上限。令和8年度税制改正で従来の30万円未満から引き上げ)。
パート・アルバイトの給与計算が経理を圧迫する
清掃業・ビルメンテナンス業のもう一つの経理負担が、パートタイマーやアルバイトの給与計算。全国ビルメンテナンス協会の調査では、業界の悩みとして「現場従業員が集まりにくい」が90.4%と最も多く、人手不足を補うために多数のパート・アルバイトを雇用する事業者が多い。
従業員が多くなると、以下の作業が毎月発生する。
- シフトに基づく勤務時間の集計(現場ごとに異なる場合が多い)
- 時給×勤務時間の計算と深夜割増(22時以降の清掃は25%増し)
- 交通費の実費精算
- 社会保険の加入判定(週20時間以上かつ月額8.8万円以上で加入対象になるケースあり。なお、2026年10月以降は月額8.8万円の賃金要件が撤廃され、週20時間以上で加入対象となる予定)
- 雇用保険料・所得税の源泉徴収
- 年末調整(扶養控除等申告書の回収・確認)
従業員が10名を超えると、給与計算だけで毎月丸1日以上かかることも珍しくない。社長や配偶者がこの作業を担当している場合、その時間を営業や現場管理に使えれば売上の維持・拡大につなげられる。
経理代行では、勤怠データをもとにした給与計算、社会保険・雇用保険の手続き、源泉所得税の納付まで一括で対応できる。特にfreee等のクラウド会計ソフトと連携すれば、勤怠→給与計算→仕訳の流れを効率化できる。GrowUpはfreee認定アドバイザーとして、導入から運用までサポートしている。
実際に経理代行を導入されたお客様からは「バックオフィス業務を任せたことで、社長が週に数回は営業に回れるようになった」という声をいただいている。それまで請求書作成や給与計算に充てていた時間を、新規顧客の開拓や既存顧客との関係づくりに使えるようになったことで、売上の安定にもつながっている。
清掃業が経理代行を活用する3つのメリット
メリット1:外注費と給与の区分を正しく管理できる
経理代行では、外注先との契約内容を踏まえた仕訳を一貫して行う。契約書の不備や実態とのズレがあれば、事前に指摘できるため、税務調査で否認されるリスクが下がる。
メリット2:月次の損益を正確に把握できる
定額契約・スポット契約・年間契約が混在する清掃業では、売上の計上タイミングを铓違えると月ごとの損益がブレる。経理代行が月次決算を正確に仕上げることで、「今月は利益が出ているのか」を毎月数字で確認できるようになる。金融機関への試算表提出にも対応しやすくなる。融資審査での試算表の重要性については、「融資審査に通りやすい試算表の作り方」の記事も参考にしてほしい。
メリット3:給与計算と社会保険手続きをまとめて任せられる
パート・アルバイトが多い清掃業では、給与計算・社会保険手続き・年末調整の負担が大きい。経理代行ならこれらの業務をまとめて委託できるため、社長や事務担当者が本来の業務に集中できる。
まとめ
清掃業・ビルメンテナンス業の経理は、売上の計上タイミング、外注費と給与の区分、消耗品の管理、パートの給与計算と、一つひとつの作業は地味だが手間がかかる。特に外注費と給与の判定は税務調査で最も指摘されやすい論点であり、日頃から契約書と実態を一致させておく必要がある。
自社で経理を回す余裕がない場合は、経理代行で日常の仕訳・給与計算・社会保険手続きを任せ、社長は営業と現場管理に時間を使うのが合理的な選択肢になる。